街中で偶然にも元恋人に遭遇…

可愛らしい彼女を連れて幸せそう。
…本当に良かったね！

あっ！向こうも気付いたみたい、
どんどんこっちに近付いてくる。

私は軽く会釈をして、
手を振った。

彼『おー！久しぶりじゃん！』

私『久しぶり！元気そうだね！』

彼は彼女の方をチラッと見て、親指で私を指すと
『あ、コレ、俺の元カノ』

私『………！』

彼女の頬は一瞬だけ動いて元に戻り、

その顔を見た私は頭の中で
除夜の鐘を鳴らされた気分だった。

前代未聞の自己紹介となった私は、
名前も告げてもらえず
モト・カノという4文字の氏名となった。

こうなるともう兄は冬樹でしかない。

私には両親から付けてもらった名前を持っているし、
その名で市役所にも届け出ている。

段々腹が立ってきた。

そもそもこの気まずさをどうしたらいいのか。

私『…貴方は私と付き合っていたつもりかもしれないけど、
私は付き合っていた記憶が
まっったくございませんが。』

そう言って少しだけスッキリして、二人がこれからも仲良く付き合っていく事を祈りながら、
私は今晩の夕ご飯の事を考えていた。

ニンニクはスライス、バジルは微塵切りに。

このお話は、実話に基づいたフィクションです。
受け止め方は貴方次第。